認知症の検査では何が行われる?病院での診断の方法・流れを解説

家族のもの忘れや判断力の低下が進み、認知症かもしれないと感じた時には、一刻も早く検査を受けることが大切です。認知症は進行性の症状ですが、早期診断・早期治療を受けることによって症状の悪化を遅らせることができます

その結果、本人の生活の質を高め、家族の介護負担を軽減することが可能になるため、認知症の検査は早めに受けることが重要です。

しかし認知症の検査では具体的にどのような検査が行われるのか、どの病院で診断を受ければ良いのか迷ってしまう方も多いでしょう。そこで本記事では、認知症の検査の流れや検査方法について詳しくご紹介します

目次

認知症が疑われる時はすぐに検査を

医者のイメージ

まず前提として、家族の認知症が疑われる場合には、できるだけ早く検査を受けることが重要です。認知症は早期診断・早期治療によって進行を遅らせ、症状の悪化を緩やかにすることができるからです。

また、早期に検査を受けることで、治療可能な認知症を根本的に治すことができるケースも存在します。具体的には、「慢性硬膜下血腫」「正常圧水頭症」などが挙げられます。これらの病気では認知症とよく似た症状が見られますが、外科手術によって完治・改善できることも多いです。

認知症の場合も、慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症の場合、検査が遅れて診断・治療が遅れてしまうと、症状が悪化して生活の質を下げてしまう危険性も高まります。家族の認知症に向き合うための時間を作るためにも、認知症が疑われる場合はなるべく早く病院で検査を受けることが大切です。

認知症検査の相談はかかりつけ医へ

認知症の疑いがある場合、まずはかかりつけ医にその旨を相談してみると良いでしょう。服用している薬や病歴をよく知るかかりつけ医に適切な病院を見つけてもらうことができるため、認知症を専門とする病院ではなくとも早めに相談してみましょう

かかりつけ医がいない場合には、精神科・心療内科・脳神経外科・脳神経内科などを設置している病院に相談するのがおすすめです。適切な病院が見つからない場合、地域包括支援センターに相談することも可能です。

認知症検査のためにかかる費用

認知症検査では、一般的に数千円〜2万円ほどの費用が発生します

認知症検査は医療保険が適用され、自己負担割合によって費用は変動します。神経心理学検査・脳画像検査などの検査の数が増えるほど検査費用は高額になる傾向があります。

認知症診断のための検査の流れ

病院のイメージ

精神科での認知症の検査では、基本的に以下のような流れで診断が行われます。

  • 面談・問診
  • 身体検査
  • 神経心理学検査
  • 脳画像検査

それぞれの検査方法について解説していきましょう。

面談・問診

もの忘れ外来などを設置している認知症専門の病院を受診すると、まずは認知症が疑われる本人や家族の方から、現在の症状やこれまでの経過について確認します。

認知症ではないかと疑い始めたきっかけや、日常生活における支障、周囲の環境の変化などを確認しながら診察を行います。

身体検査

次に、一般的な診察と同様に身体検査を行います。血液検査・尿検査や心電図検査、レントゲン検査などを実施する中で、他の病気と併発していないかを確認します。

また、身体検査の結果をもとに今後の医療方針・介護方針を決定することとなります。

神経心理学検査

神経心理学検査は、認知症を診断するための質問・作業を実施する検査です。

質問への回答や簡単な作業の結果、一定の点数を下回ると認知症の疑いがあると判断されます。

ただし、神経心理学検査の結果だけで認知症と判断するわけではなく、緊張・不安によって正しく検査を受けられない可能性も考慮されます。

脳画像検査

脳画像検査では、CTやMRIと呼ばれる装置を使い、脳の萎縮や血流の状態について検査を行います。現在の脳の形状や脳の働きを画像をもとに調べることで、認知症の種類や進行状況とともに診断を下します

認知症の神経心理学検査

チェックリストのイメージ

認知症を診断するためには、さまざまな方法で神経心理学検査が行われます。ここでは代表的な神経心理学検査の内容として、以下の3つをご紹介します。

  • 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
  • ミニメンタルステート検査(MMSE)
  • 時計描画テスト(CDT)

一つずつ順番に解説していきます。

改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

HDS-Rは、認知機能への障害を調べるためのテストで、日本では最も広く利用されている検査でもあります

今日の日付や現在地、簡単な記憶力テストなどで構成されており、医師の質問に患者が答える形の検査です。30点中20点以下の場合に認知症の疑いありと判断されます。

ミニメンタルステート検査(MMSE)

MMSEも認知機能テストの一種であり、医師の質問に回答する形で検査が行われます

HDS-Rと比較して質問内容が幅広く、何ができないのか、どんなことを苦手とするのかを詳しく判断することに役立ちます。

30点中26点以下で軽度認知症の疑いあり、21点以下で認知症の疑いが強いと判断されます。

時計描画テスト(CDT)

CDTは、指定された時計の時刻を正確に描画できるかを見る検査です。

認知症の場合、時計の大きさが極端に小さいケースや、数字や針を正しく書けないケースが見られます。前述の2つの検査とは異なり、CDTは医師と患者が向き合って行う作業ではないため、診察に抵抗感がある方でも実践しやすいことが特徴です。

認知症の脳画像検査

MRIのイメージ

認知症検査で用いられる脳画像検査では、CT・MRI・VSARDなどの脳の形状を見るための検査と、SPECTと呼ばれる脳の働きを見るための検査の2種類に分かれます

それぞれの検査内容について解説しましょう。

CT検査

CT検査では、X線を用いて身体の断面図を撮影する検査です。脳を輪切りにしたような画像を撮影することから、脳の萎縮度合いや頭部の外傷・脳出血を確認することに役立ちます

MRI検査

MRI検査は、電磁気を用いて脳の内部を撮影する検査です。脳梗塞・脳動脈瘤・脳出血などの有無を調べることに役立ち、認知症の発症時期を推測するために実施されます。

VSRAD検査

VASRAD検査は、MRI検査の結果をもとに、脳の萎縮度合いを調べることができる検査です。

アルツハイマー型認知症の発症には、記憶を司る海馬などの部位に萎縮がみられることがわかっており、VSRADはこうした脳の萎縮を調べることができる検査です。

SPECT検査

SPECT検査は、微量の放射性物質を含んだ検査薬を投与し、その検査薬が集まる部位から検出される放射線を画像化する検査です。

SPECT検査によって脳の血流が低下している部位や、低下の度合いを調べることにより、認知症の診断に役立ちます。

認知症の検査・診断を受ける時の注意点

看護師のイメージ

認知症の検査・診断を受ける時には、本人の不安や緊張を和らげ、今後の治療をスムーズに進めるためにも、以下のような点に注意することが重要です。

  • 認知症への理解を深めておく
  • 診断結果を聞く時は家族も同席する
  • セカンドオピニオンも積極的に活用する

それぞれの注意点をご紹介します。

認知症への理解を深めておく

認知症の検査を受ける際には、認知症と診断された時に備えてしっかりと理解を深めておくことが大切です。

認知症がどのような症状で、今後必要な医療・介護について調べておくことにより、心の準備にもつながります。認知症に対しての過度なネガティブなイメージを取り払うことで、本人や家族の不安も軽減できるでしょう。

認知症検査は、検査を受ける方にとっては大きなストレスになり、緊張や不安も大きくなるものです。周囲の家族の方が認知症に対して正しい理解を深めて精神的な支えになることで、落ち着いて診断結果を受け止めることができるでしょう。

診断結果を聞く時は家族も同席する

認知症の検査結果を聞く時には、本人だけではなく家族や周囲の方ができるだけ同席するようにしてください

家族が同行できない場合、信頼できる親戚の方などに連絡をとり、すぐに相談できる体制を整えておくと良いでしょう。

認知症の診断を受けた時、本人の方にとってはショックが大きく医師の話が耳に入らないケースも少なくありません。同席した方が今後の治療方針についてしっかり把握しておくことで、今後スムーズに治療を進めることができます。

セカンドオピニオンも積極的に活用する

認知症の診断を受けたが、診断内容に納得できない場合や疑問がある場合には、セカンドオピニオンも積極的に活用してみましょう。つまり、異なる病院でも認知症検査を受けて、別の医師から診断を受けるということです

認知症検査を受けた病院で「セカンドオピニオンを受けたい」と伝えることで、認知症の専門病院に紹介状を書いてもらい、これまでの検査情報を踏まえた検査を受けることも可能です。

複数の診断結果を聞くことで、本人や家族の方も納得して認知症治療を始めることができますので、遠慮することなくセカンドオピニオンを活用しましょう。

まとめ

認知症の検査では、本人の方との面談・問診や身体検査に加えて、医師からの質問に答えながら認知機能テストを行う「神経心理学検査」や、CT・MRIを使って脳の状態を調べる「脳画像検査」などが用いられます

一つの検査結果だけで認知症と診断するわけではなく、それぞれの検査結果を総合して診断が下されることとなります。

認知症の検査は医療保険が適用され、費用は数千円〜と高額な検査ではないため、家族の認知症が疑われた時には積極的に受診してみることをおすすめします。

認知症の種類によっては、早期発見によって症状を完治させたり、症状の進行を遅らせたりできるケースもありますので、セカンドオピニオンも活用しながら認知症の検査を受けてみましょう。

当院・丹沢病院について

認知症は、症状によっては薬と保持機能の活用で発症や進行を遅らせることができ、早い治療によって健康な時間を長くすることができます

当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。(診断により、入院も可能です)

なお、ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、医師による「もの忘れ相談」 を開設しています。

※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

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この記事の監修者

丹沢病院院長。認知症サポート医の資格所有。認知症に関する多くの講演実績を持っており、患者だけでなく、その家族に対しての不安・悩みにも寄り添い、サポートを行ってきました。「認知症はとにかく早期に発見し、治療することで、進行を緩やかにすることができる」ということです。あなた自身のためにも、そしてご家族のためにも、不安に感じられることがございましたら、まずは当院にお気軽にご相談ください。

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