認知症の方を落ち着かせる方法|コミュニケーションの取り方を解説

認知症の方の中には、繰り返しの質問、幻視・幻聴を元にした発言、また攻撃的な言動など、落ち着きのない行動をすることがあります。

相手を落ち着かせようとしても、中々言うことを聞いてくれず、介護者の方はストレスを感じることもあるでしょう。

そこで本記事では、認知症の方を落ち着かせる方法やコミニュケーションの取り方について解説します。

目次

認知症の方が落ち着かなくなる原因

高齢者を落ち着かせる介護士

「落ち着きがない」とひとことで言っても、その「落ち着きがない」行動や症状はさまざまです。そもそも、“認知症”という病気はあくまでも総称であり、主に以下の4つの種類に分けられます。

  • アルツハイマー型認知症
  • 血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症

そして、それぞれの認知症において「落ち着きのない」症状は異なります。あくまでも一例として、下記は認知症の種類に応じた落ち着きのない行動をまとめたものになります。

認知症の種類落ち着きのない行動に該当する症状
アルツハイマー型認知症見当識障害や判断力・理解力の低下といった中核症状のほか、不安やうつ状態、暴言・暴力といった行動・心理症状(BPSD)が見られる。
血管性認知症記憶障害や感情のコントロールが効かなくなることがある。
レビー小体型認知症そこにあるはずのない人間や動物・虫がいると主張する幻視・幻聴を見る・発言する。
前頭側頭型認知症我慢がきかない性格になったり、わがままを押し通そうとしたりする様子が見られる。同じタイミングで何度も同じ行動を繰り返す「常同行動」が現れることも。

また、認知症と診断されてはいないものの、認知機能が低下してもの忘れの頻度が多くなる
軽度認知障害(MCI)」をお持ちの方の場合、何度も同じことを質問したり、何度も同じことを話したりする、置き忘れや探しものをする頻度が多くなるという症状が見られることもあります

認知症の方を落ち着かせるためにはまず病院で診断を

病院のイメージ

上述した通り、認知症の種類に応じて「落ち着きのない行動」は異なります。また認知症自体を完治させることは不可能ではあるものの、その症状を和らげる・進行を遅らせることは可能です。

そのため、まずは認知症の方がどれに該当するのかを専門病棟で診断してもらった上で、医師と相談の上で治療に励むことが最も良い選択肢となります。

「どの医療機関に相談すれば良いのか分からない」「実際にどれくらいの検査費用がかかるのか分からない」といった方はまずは下記の記事をご覧ください。

関連記事:認知症の検査では何が行われる?病院での診断の方法・流れを解説
関連記事:認知症の病院は何科を受診する?診療科や検査費用についても解説

なお、当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。

ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、医師による「もの忘れ相談」 を開設しています。※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

認知症の方を落ち着かせる方法・コミュニケーション(基本的な接し方)

高齢者の手を握るイメージ

続いては、実際に認知症の方を落ち着かせる方法・コミュニケーションの基本的な接し方について紹介します。

前提として、認知症の方を落ち着かせるには、まず相手の症状を正しく理解し、相手に寄り添う気持ちや態度を見せることが大事です。

認知症である方も思うように行動できないことに戸惑っていることがあるため、厳しい態度は取らずに、優しく寄り添うことを意識しましょう。

相手の気持ちに共感する

認知症の方を落ち着かせるには、相手の言うことや行動に共感してあげることが大切です。

相手が間違った行動をした際、それを咎めてしまうと、不安やストレスを一層感じてしまい、落ち着きのない行動を加速させてしまうことにも繋がりかねません。

逆に相手の行動や言動を否定せずに寄り添ってあげることで、安心感を感じて不安や焦りが軽減されます。常に寄り添う姿勢を見せることで、次第に信頼関係が構築されていき、日々のコミュニケーションもスムーズになりやすくなります。

相手のペースに合わせる

認知症の方は言われたことを理解するのに時間がかかるため、相手のペースに合わせながら会話をすることが大切です。

話の途中で間違えることがあっても、急かしたり注意したりせず、本人のペースに任せましょう。自分のペースで会話できると安心感を覚えて、本人も落ち着きを取り戻し、円滑なコミュニケーションが成り立ちます。

優しく声をかける

落ち着きのない認知症の方とコミュニケーションを取る際には、穏やかな口調を意識することも大切です。

認知症の方がストレスを感じることがないように、声を荒げたり厳しい口調で話したりすることはせず、常に柔らかい口調を心がけましょう

何かトラブルが発生しても、「大丈夫?」と優しく声をかけることで、相手を落ち着かせられます。「辛かったね」「もう大丈夫だよ」などと相手に寄り添う態度を見せながら声をかければ、不安も次第に和らいでいき、徐々に心を開いてくれるようになります。

短い言葉で簡潔に話す

認知症の方は認知機能や聴力が低下していることも多いことから、なるべく短い言葉で簡潔に話してあげることもポイントです。

長い言葉や難しい内容の話をすると、かえって相手を混乱させてしまうので、わかりやすく話すことが大事です。相手が「はい」「いいえ」で答えやすい質問をするなど、理解度に応じて質問の内容を工夫することも大切です。

スキンシップを図る

相手との会話が成り立たなくなったときは、手を握るなどスキンシップを図りましょう。上述した通り、認知症の方の中には、目や耳など、外界からの認知機能が低下している方もいます。つまり、言葉でのメッセージだけでは相手に伝わりにくくなることもあるのです。

そのため、自然で適度なスキンシップも有効的です。腕や背中をさするなど優しくスキンシップを図ることで、相手が落ち着くことがあります。

なお、本人が嫌がっている場合は無理にしようとせず、相手の反応を見ながら対応することが大切です。

認知症の方を落ち着かせる方法・コミュニケーション(症状別の接し方)

高齢者とチェックリスト

続いてはより具体的に、症状やシチュエーション別に認知症の方を落ち着かせる方法・コミュニケーションついてご紹介します。

帰宅願望を訴える場合

「家に帰りたい」と訴えて自宅や施設から出て行こうとする場合は、今の生活環境に不安を感じていたり、落ち着ける環境を探していたりすることがあります

そのため、自分のことを受け入れてくれる、安心できる場所を提供してあげることが重要です。

具体的には、居室に対して馴染みのある家具や写真などを飾る、表札や案内板などを家に置いておく(本人に“家”であることを意識させる)などといった対策が挙げられます。

また認知機能や身体機能の低下によって、普段できていたことができなくなっている状態になっている方もいます。そこで電気を1つつけるのに対しても負担がかかり、かえってストレスになり、家に居づらくなってしまう…といった心理状況も考えられます。

本人がストレスなく生活ができるよう、住環境を整える(バリアフリーだけでなくとも、本人が手に取りやすい位置にリモコンを置く、テレビの配置を変えるなど)ことも対策の一つとして挙げられます。

被害妄想(盗難や捜し物など)

自分で物を置いたことを忘れて「人に盗まれた」と勘違いするケースがありますその際、頭ごなしに否定するのではなく、まずは本人の言い分を聞き、「一緒に探しましょう」などと相手に寄り添ってあげましょう。

なお、すぐに物を見つけてしまうと、見つけた人が犯人扱いされる可能性もあります。そのため、しばらくは探すふりをして、タイミングを見計らって見つけるなどの工夫が必要です。自分が犯人扱いをされているときは、他の方に探してもらうと良いでしょう。

食事したことを忘れている(訴える)場合

食事をした直後に「まだ食べていない」と訴えるのは、記憶障害によるものです。この場合、食事が終わった事実を伝えるのではなく、本人の訴えに合わせて対応することが大切です。

例えば「いま食事の準備をしているから、ちょっと待ってね」などと、その場がおさまるような納得感を本人に与えるのが有効です。空腹感を訴える場合は、おにぎりなどの軽食を出し、本人の気持ちが落ち着くのを待ちましょう。※ただし、カロリーの過剰摂取や栄養の偏りには注意が必要です。

暴言・暴力

暴言や暴力などの攻撃的な言動が見られるときは、しばらく距離をとって本人が落ち着くのを待ちましょう。無理に落ち着かせようとすると、怒りが高まり、かえって症状が悪化してしまうこともあります。

また怒りの原因を探ってみることも重要です。例えば「リモコンがないじゃないか!」「風呂はどこだ!」など、場所が分からなくなってしまっていることを原因にしている場合、張り紙や分かりやすい位置に置いておくなどの対策をとっておくことで、暴言や暴力を未然に防ぐこともできるようになります。

ただし、暴言・暴力(特に暴力)に関しては介護者自身に身体的な被害が及ぶ危険性があるものでもあります。一人で抱え込まず、あなたの力になってくれる機関はあります。あまりにも暴言や暴力を繰り返す場合は、必ず専門家に相談しましょう。

関連記事:家族の認知症の介護にもう限界…心を軽くするための解決策【医師監修】
関連記事:認知症の親を病院に連れて行く方法は?受診しないとどうなるかも解説

認知症の方を落ち着かせる上での注意点・NG項目

看護師とNGポーズ

認知症の方と話そうとしても、うまくコミュニケーションが取れずに悩むときもあるでしょう。そのような際に間違った対応をすると、信頼関係が崩れて相手の症状が悪化することがあります

そこで下記では認知症の方とコミュニケーションをするうえで注意すべき3つのポイントを紹介します。

1. 否定しない

認知症の方が間違ったことを言ったり行動したりしたときに、頭ごなしに否定すると自尊心や自信を傷つけてしまい、症状が悪化する恐れがあります

何かを忘れたりできなくなったりするのは認知症のせいであり、それを正そうとしても状況は改善しません。相手の意見を否定するのではなく、常に受け入れる姿勢が大切です。

相手に共感し、一緒に失くした物を探したり歩いたりすると不安や焦りが軽減され、落ち着いてコミュニケーションが取れるようになります。

2. 叱らない

認知症の方を叱ったり大声などの威圧的な態度で接したりすると、本人はストレスを感じてしまいます。叱られたことに対して不安を覚え、信頼関係にも悪影響が出るため注意が必要です。

忙しいときに言うことを聞いてくれないと、つい怒りたくなるかもしれませんが、相手の行動や言動を制限しようとせずに、まずは様子を見守りましょう。こちらが余裕を持って対応することで、相手の不安も軽減され、落ち着きを取り戻すようになります。

3. 放置・無視しない

放置したり無視したりすると、相手は孤独感を感じたり自己肯定感を失ったりして、うつ病などの症状が生じることがあります。

相手が間違ったことをしたり事実と異なることを言ったりしても、無視や放置をするのではなく、本人の気持ちに寄り添ってあげることが大切です。「そうだったの、大変だったね」「もう大丈夫だよ」などと共感したり思いやりの言葉をかけてあげたりすれば、気持ちも落ち着くようになります。

認知症を正しく理解して落ち着かせるコミュニケーション方法を実践しよう

本記事で解説した通り、認知症における「落ち着きのない行動」はその種類に応じて異なります。

まずは専門機関で診断を受け、認知症の方とコミュニケーションを取る際には常に相手の気持ちに寄り添うことを意識しましょう。

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