認知症は、その症状を遅らせる・緩和することはできるものの、根本的な治療方法は確立されておらず、発症リスクを下げるための予防が重要になります。
中でも日々の生活習慣の改善がポイントとなってくるため、事前に予防策を把握しておき、日常生活の中に取り入れていくことが大切です。
本記事では、認知症の予防方法について解説します。認知症に関して不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
認知症は予防できる?
残念ながら、現時点で認知症を確実に予防する方法は確立されていません。
1つの予防法の効果が証明されるには、長い調査期間が必要なため、どの予防方法も万全とは言い切れないからです。
また一言で認知症とは言っても、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」のそれぞれによって発症する原因や初期症状、その後の経過も異なります。
しかし、認知症のための予防方法、それに応じた効果が全く無いわけではありません。
認知症の発症は日ごろの生活習慣(食事、運動、睡眠など)との関連があるとされており、普段の生活習慣を改善することによって、認知症の発症リスクを低下させることが期待されています。
認知症を予防する6つのポイント
上記で説明した通り、認知症の発症は生活習慣との関連性が高いとされています。
そこでここからは認知症の予防が期待できるとされている、下記の6つのポイントについて紹介します。
- 食習慣の改善
- 運動習慣
- 対人接触を増やす
- 知的行動・趣味を始める
- 睡眠習慣の改善
- 目や耳の機能維持
1. 食習慣の改善
食事は毎日欠かせない習慣であり、認知症の予防にも効果が期待できます。
認知症予防を期待できる食習慣のポイントは、以下の4つです。
- バランスのよい食事を摂る
- 食べ過ぎない
- 間食を控える
- 塩分を制限する
暴飲暴食や偏食は、認知症だけでなく高血圧や糖尿病といった生活習慣病の発症リスクにも繋がります。糖分・塩分・脂質の多い食事はできるだけ避けて、適切な摂取カロリーの範囲内で栄養バランスのとれた食事をしましょう。
また、食事時にはよく噛むことも意識しましょう。脳に近いため、噛むことによって脳へと刺激が伝わりやすくなります。
※なお、認知症の予防に有効な食べ物については本記事の後半で紹介しています。
2. 運動習慣
食生活に加えて、運動習慣を取り入れることを意識しましょう。
運動には「有酸素運動」と「無酸素運動」があります。
有酸素運動:軽めの負荷で長時間継続できる運動(ウォーキングなど)
無酸素運動:短時間に大きな力を必要とする運動(筋力トレーニングなど)
認知症予防の観点からは、有酸素運動を中心とした運動が効果的であるといった研究結果も出ています。
運動の習慣がない方は、エレベーターを使わずに階段を歩く、1駅前で降りてウォーキングをするなど、無理のない範囲で始めてみましょう。
なお、具体的なトレーニング方法については以下の記事をご覧ください。
認知症予防トレーニングを動画付きで紹介|コグニサイズについても
3. 対人接触を増やす
人とコミュニケーションを取ることは、脳の活性化が促され、認知症の予防に効果的だとされています。
特に笑う、褒め合うというのもポイント。快刺激を得られ、脳にドーパミンが放出され、記憶力や学習能力が上がることが期待できます。
知人や友人と会話する機会を増やす、地域の交流会やボランティア活動へ参加して交流する機会を設けるなど、他者との関わりを増やしましょう。
他者とのコミュニケーションが苦手な方や、たくさんの人と関わることがかえってストレスになる方は、趣味を始めて特定のコミュニティに属するなど、無理のない範囲でコミュニケーションの場を増やしていくのがおすすめです。
※認知症の予防が期待できる趣味については下記で紹介しています。
4. 知的行動・趣味を始める
知的活動を行うことによって、前頭葉が活性化され、脳が実現するように働き(モチベーションが上がり)、認知機能の予防につながります。
知的活動の代表的なものとしては下記が挙げられます。
- 囲碁・将棋
- パズル
- ゲーム
- 音楽(楽器演奏など)
- 学習
- 絵画
また、知的行動習慣に関連して、趣味を見つけることも認知症の予防のために有効であるとされています。
実際に、国立がん研究センターなどが行った研究では、趣味を持つことが認知症リスクを低下させる可能性が示され、特に65歳以上の趣味がたくさんある人では認知症リスクが32%減少したという結果が出ています。
なお、千葉大学による「認知症予防に効果的な趣味は?」の研究結果によると、認知症予防に効果が期待される趣味は下記であることが発表されました。
◼︎男女共通でおすすめの趣味
グラウンド・ゴルフ、旅行
◼︎男性におすすめの趣味
ゴルフ、パソコン、釣り、写真撮影
◼︎女性におすすめの趣味
手工芸、ガーデニング・庭いじり
手軽に始めやすいものもあるため、是非無理のない範囲で始めてみてはいかがでしょうか?
5. 睡眠習慣の改善
認知症の予防には、十分な睡眠が必要です。睡眠中に脳の毒素を洗い流し、脳細胞や認知機能の維持にもつながります。
個人差はあるものの、認知症予防に効果的な睡眠時間は、毎日約7~8時間が最適と言われています。
ただし、単に寝れば良いというわけではありません。睡眠の質を意識することも大切です。質の良い睡眠のポイントは、下記の通りです。
- 寝室の温度と湿度を適切に保つ
- 身体に合う寝具を選ぶ
- 寝る前のスマートフォンの使用やテレビの視聴は控える
昼寝も認知症予防に効果があるとされていますが、夜の睡眠に影響が出ない範囲(30分以内)に治めておくのがポイントです。
6. 目や耳の機能維持
「食習慣の改善」において、食事時によく噛むことを意識することをお伝えしました。関連して、目や耳の機能の維持も重要になります。
外界から入ってくる情報をきちんと取り入れられるようにしておくことは、認知機能の維持に欠かせません。
例えば、
耳が聞こえづらくなる
→コミュニケーションが取りづらくなる
→会話を控えてしまう
このような状態が続くと、外界からの刺激が減ってしまうため、認知機能の低下につながってしまいます。
視力・聴力検査を実施した上で、自身の視力に合った眼鏡を新調する、耳が聞こえづらくなったと感じた場合には補聴器を装着することも考慮するなど、目や耳の機能維持に努めましょう。
【年齢別】認知症の予防策・早期発見のためにできること
上記の生活習慣に加えて、認知症の早期発見のためにも、ご自身の年齢にも着目して、予防を行っておくことが重要です。
特に60代以降になると、認知症の発症リスクも高くなるため、既に発症している可能性もあり、その場合は医療機関への相談も必要になってきます。
下記からは年代別に取り入れたい予防策をご紹介します。
20~30代:規則正しい生活を送る
20代~30代の方は、規則正しい生活を意識しましょう。
不規則な生活を送ると将来的な認知症リスクが高まるため、バランスの良い食事を摂ったり適度な運動を取り入れたりすることが大切です。
40~50代:定期的に健康診断を受ける
40~50代は定期的に健康診断を受けて、認知症を始めとする、健康リスクの早期発見に努めましょう。
健康診断を受けることで、自覚症状のない病気に気付くことができ、早い段階で対策を行えるようになります。
特に高血圧、糖尿病、高脂血症は認知症の発症リスクとも関連があるとされているため、医師の指導のもと生活習慣などを改善することが大切です。
60代以降:医療機関での検査も検討する
上述した通り、認知症は年齢と共に発症リスクが高くなることが示唆されています。
実際に、65歳以上は約16%、80歳代の後半になると男性35%/女性44%、95歳を過ぎると男性51%/女性84%の割合で認知症であることが明らかになっています。
そのため、少しでも不安な方や、「もの忘れ」「理解力・判断力の低下」「集中力・注意力の低下」「趣味嗜好・性格の変化」などの認知症の初期症状が表れた場合(周りから指摘された場合)には早めに医療機関へと相談することが重要です。
万が一認知症と診断されても、発見や治療が早ければ進行を緩やかにすることが可能になります。
なお、具体的な認知症の兆候やチェックリストについては下記の記事をご覧ください。
関連記事:家族が認知症かも?初期症状に対してのチェックリストを確認しよう
認知症の予防になる食べ物
本記事でご紹介してきた通り、認知症の予防には食生活の改善が欠かせません。
そこで下記からは認知症の予防になる食べ物を紹介します。
ただし、下記のもののみを食べれば良いというわけではありません。あくまでもバランスを踏まえた上で、日々の食生活に取り入れていきましょう。
野菜・果物
野菜や果物に含まれているビタミンB群、C、E、βカロチンには、動脈硬化やアルツハイマーの原因物質の増加を抑制する働きがあります。
また、緑色の葉野菜や色鮮やかな果物などには抗酸化物質が豊富に含まれており、認知症のリスク低下に繋がります。
魚
サバ・イワシ・サンマなどの青魚には、脳の活性化が期待されるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸が多く含まれています。
オメガ3脂肪酸は脳の機能を高めるため、認知症の予防に繋がります。
毎日肉の多い食事を摂っている方は、週に1回は青魚を食べるなど、健康に配慮した食生活に切り替えましょう。
大豆食品
納豆や豆腐、味噌など大豆製品には血中コレステロールや中性脂肪を低下させる働きがあるため、生活習慣病の予防に効果的です。
生活習慣病のリスクが下がれば、認知症の予防にも効果を期待できます。特に納豆にはナットウキナーゼが含まれており、認知症の原因とされるアミロイドβの蓄積を抑制できます。
ほかにも血栓を防ぐ効果があるため、脳梗塞を防ぐことも可能です。
認知症予防のために生活習慣を見直そう
認知症の予防のためには、毎日の生活習慣の改善が大切です。
特に40代以降の方は健康診断を定期的に受け、医師の指導のもと日々の食生活や運動習慣・睡眠を見直し、早い段階から認知症の予防に努めておくことが大切です。
なお認知症が疑われる場合(ご自身のみならずご家族も含め)、早めに病院を受診して認知症検査を受けましょう。
認知症の種類によっては症状が一気に進行するものもあります。かかりつけ医に相談する、精神科やもの忘れ外来などに相談するなどして、認知症が悪化・重症化するのを防ぎましょう。