認知症は、アルツハイマー病をはじめとする脳の病気により、脳の神経細胞が減少し、認知機能が低下して社会生活が困難になることを指します。
認知症には主に4つの種類が存在し、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」のそれぞれによって発症する原因や初期症状、その後の経過も異なります。
認知症が疑われる家族に適切なケアを行い、QOL(生活の質)を維持・向上させるためには、これらの認知症の種類や症状、「認知症かも?」と思った時の適切な相談先について知っておくことが重要です。認知症は根本的な治療法は確立されていませんが、早期発見・早期治療により、進行を遅らせることができるためです。
本記事では、認知症の基本知識と4種類の認知症の違いについて一覧で解説しながら、認知症の検査・診断・治療などについて詳しく解説します。
認知症とは?
認知症とは、アルツハイマー病や脳卒中などが原因で脳の神経細胞が損傷を受け、脳が萎縮することで認知機能が低下する症状を指します。
アルツハイマー型認知症の場合、初期症状として「もの忘れ」が出てくることがよく知られており、進行すると自分が置かれた状況がわからなくなる見当識障害や、慣れ親しんだ家事がままならなくなるなどの判断力・理解力の低下がみられます。
日本国内では、65歳以上の高齢者のうち、2012年時点で約462万人が認知症である、と推計されています。また認知症予備軍とも言われるMCI(軽度認知障害)は約400万人、合計すると65歳以上の高齢者のうち、およそ4人に1人が認知症または予備軍と考えられています。
2018年には認知症の方の数が500万人を超え、65歳以上の高齢者のうち、およそ7人に1人が認知症と推計されています。
認知症のもの忘れと加齢によるもの忘れの違い
認知症の初期症状として「もの忘れ」が挙げられますが、ただもの忘れが多くなっただけでは認知症と断言することはできません。というのも、加齢に伴って誰でももの忘れが激しくなることがあるからです。
しかし認知症のもの忘れと、加齢によるもの忘れには明確な違いがあります。
認知症のもの忘れ | 加齢によるもの忘れ | |
過去の体験 | 体験そのものを忘れる | 体験の一部を忘れる |
もの忘れの自覚 | ない | ある |
日常生活への支障 | 大きい | 小さい |
もの忘れの進行 | 比較的早く進行する | 非常に緩やかに進行する |
上記のように、認知症のもの忘れは過去の体験自体を忘れてしまうのが特徴で、たとえば夕食を食べたことそのものを忘れ、「夕食はまだ?」と家族に促す言動もみられます。一方で加齢によるもの忘れは、夕食を食べたこと自体は覚えているが、具体的なメニューが思い出せない状態が挙げられます。こちらがヒントを出せば思い出せるケースが多く、何かを忘れているという自覚も持っています。
認知症のもの忘れの場合、発症初期であればもの忘れを自覚できることもありますが、進行すると何かを忘れていること自体を認識できなくなるのが特徴です。加齢によるもの忘れは、非常に緩やかに進行しますが、認知症によるもの忘れは症状の悪化とともに進行していきます。
認知症とMCIの違い
近年では、健常者と認知症の間のグレーゾーンとして、MCI(軽度認知障害)という言葉が注目されています。MCIは、日常生活への影響はなく認知症とは診断されないものの、記憶力や判断力が低下し、認知症の初期症状に近い言動がみられる状態です。
認知症は根本的な治療が難しい症状ですが、MCIの段階であれば適切な治療や予防を行うことで、健常な状態に回復することがわかっています。MCIの方のうち、年間10%〜15%の方が認知症に移行すると考えられており、認知症への悪化を防ぐためにも早期発見・早期治療が重要とされています。
関連記事:軽度認知障害(MCI)とは?認知症との違い、チェック方法を解説
外科手術により完治できる認知症も
本記事で紹介する4種類の認知症のほかにも、認知症とよく似た症状が現れる病気も存在します。たとえば、血液が溜まって脳を圧迫してしまう慢性硬膜外血腫、脳脊髄液が溜まって脳を圧迫する正常圧水頭症などが挙げられます。
こうした病気では、もの忘れなどの認知症に似た症状が現れますが、早期に検査を受けて適切な外科手術を受けることにより、完治できる可能性もあります。
そのため家族が認知症かもしれないと疑われる場合には、早めにかかりつけ医や専門病院を受診することが大切です。
関連記事:家族が認知症かも?初期症状に対してのチェックリストを確認しよう
4種類の認知症の特徴一覧
続いて、認知症の4つの種類の特徴について、一覧でご紹介します。前述の通り、認知症には主に以下4つの種類が挙げられます。
- アルツハイマー型認知症
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
最も割合が多いのはアルツハイマー型認知症、次いで血管性認知症やレビー小体型認知症の症例が多くなっています。
それぞれのタイプによって、発症するメカニズムや脳の変化、初期にみられる症状なども異なるので、下記の表で特徴を把握しておくと良いでしょう。
次項からは、4種類の認知症の特徴や症状について、一つひとつ解説します。
アルツハイマー型認知症の特徴・症状
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多い症状です。アルツハイマー病を原因として発症する認知症で、初期症状としてもの忘れが見受けられるのが特徴です。
時間の経過とともにゆっくりと症状が進行し、見当識障害や判断力・理解力の低下といった中核症状のほか、不安やうつ状態、暴言・暴力といった行動・心理症状(BPSD)がみられることもあります。
関連記事:アルツハイマー病とは?病院は何科?検査・診断方法について解説
アルツハイマー型認知症の特徴と原因
アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドベータと呼ばれるたんぱく質が蓄積し、このたんぱく質が脳の神経細胞を破壊することで発症すると考えられています。
アミロイドベータが脳に蓄積するメカニズムは詳しくわかっておらず、脳画像検査を受けると短期記憶をつかさどる海馬と呼ばれる部位を中心に脳の萎縮がみられるのが特徴です。
近年になって、糖尿病や高血圧といった生活習慣病がアルツハイマー型認知症を発症する可能性を高めることがわかってきました。そのためアルツハイマー型認知症の予防には、生活習慣病の治療・予防が重要になります。
アルツハイマー型認知症の症状や経過
アルツハイマー型認知症の初期症状として、もの忘れが挙げられます。アルツハイマー型認知症では、脳の短期記憶をつかさどる海馬が萎縮するため、最近のことを記憶する力が低下する傾向にあります。
過去の出来事はよく覚えているものの、最近の出来事を忘れてしまい、自分が何かを忘れていることも自覚できないのが特徴です。
アルツハイマー型認知症が進行すると、今の日時や場所がわからなくなる見当識障害や、見聞きした情報をうまく理解できない失語・失認が現れるようになります。外出した際に帰り道がわからなくなり、迷子になるケースもあります。
症状の進行は比較的緩やかで、時間が経過するとともにカーブを描くように進行するのが特徴です。
血管性認知症の特徴・症状
血管性認知症は、脳の血管障害を原因とする認知症です。脳出血や脳梗塞によって脳が損傷を受け、損傷を受けた脳の部位の機能が失われることで、さまざまな症状が現れます。
代表的な症状として、もの忘れや手足の痺れが挙げられますが、血管性認知症は損傷を受けた脳の部位によって症状が異なる点に注意が必要です。
関連記事:血管性認知症とは?特徴・症状や原因、治療方法を医師が解説
血管性認知症の特徴と原因
血管性認知症を発症する原因は、脳出血・脳梗塞・脳動脈硬化症といった脳卒中により、脳の神経細胞が圧迫されたり血流が行き届かなくなることにあります。脳卒中を起こした脳の部位によって症状が異なるため、「まだら認知症」と呼ばれることもあります。
アルツハイマー型認知症と同様に、生活習慣病が血管性認知症を引き起こす原因になるため、予防のためには生活習慣の見直しが重要です。
血管性認知症の症状や経過
血管性認知症は、記憶障害や運動障害、意欲の低下、感情のコントロールが効かなくなることが主な症状です。手足の痺れや麻痺、嚥下障害がみられることもあります。損傷を受けた脳の部位によっては、視力の低下や排尿障害が現れるケースもあります。
歩行障害が主な症状として現れている場合、歩行中に転倒して怪我を負い、寝たきりになることで一気に症状が進むケースもあるため注意が必要です。自宅の段差をなくす介護リフォームや、運動機能の回復を図るリハビリテーションに取り組むことが大切になります。
また、血管性認知症の経過は、ほかの認知症とは異なり、「階段状」に症状が進行することが大きな特徴です。脳卒中を起こした時に症状が一気に悪化し、その後は現状維持もしくは一時的な改善がみられることもありますが、再び脳卒中を起こすと症状が一段と進行します。
レビー小体型認知症の特徴・症状
レビー小体型認知症は、脳に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質が蓄積し、脳の神経細胞が損傷を受けることで発症する認知症です。
パーキンソン病とともに「レビー小体病」と呼ばれることがあり、パーキンソン病のような症状がみられるのが大きな特徴です。調子の良い時・悪い時を繰り返しながら徐々に進行する傾向があり、睡眠中に激しく手足を動かして怪我をしてしまうケースもあります。
レビー小体型認知症の特徴と原因
レビー小体型認知症の原因となる「レビー小体」は、パーキンソン病を引き起こすたんぱく質であり、発症後の症状でもパーキンソン症状が現れるのが特徴です。脳にレビー小体が蓄積するメカニズムは詳しくわかっていませんが、65歳以上の男性に多く発症する傾向があるほか、頭部への外傷、慢性的なストレスなどがレビー小体型認知症の発祥に関わっていると考えられています。
レビー小体型認知症の場合、ほかの認知症のような脳の萎縮が見られないのも特徴です。なお、脳の後頭部への血流低下が起こることが多いこともあるため、SPECT検査と呼ばれる脳の血流を調べる検査が用いられます。
レビー小体型認知症の症状や経過
レビー小体型認知症の特徴的な症状であるパーキンソン症状は、手足の筋肉がこわばって動かしにくくなったり、手足が震えたりする症状を指します。日常生活での動作が緩慢になり、周囲の家族が異常を感じて病院を受診するケースも多いです。
また、そこにあるはずのない人間や動物・虫がいると主張する幻視・幻聴も、レビー小体型認知症の症状に挙げられます。本人にとっては、現実としてはっきりと認知できることから、周囲の家族に強くアピールしてくるケースも多いです。
レビー小体型認知症の経過は、調子の良い時・悪い時を行き来しながら進行します。その日の調子によっては、認知症が改善されたように感じることもありますが、数時間後や翌日には認知機能が低下して会話がままならなくなることもあります。
前頭側頭型認知症の特徴・症状
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉と呼ばれる部位が萎縮し、行動や人格が大きく変化するのが特徴です。
国の指定難病に認定されており、もの忘れの症状があまりみられないことから、認知症ではない別の病気が疑われることも多いです。
主に社会性が低下して、他者への配慮に欠けた言動が現れます。しかし症状が進むにつれて意欲の低下が顕著になり、異常な行動がみられにくくなる傾向にあります。
関連記事:前頭側頭型認知症とは?特徴(初期症状や進行速度、原因)を解説
前頭側頭型認知症の特徴と原因
前頭側頭型認知症では、社会性や理性をつかさどる前頭葉、感情や記憶をつかさどる側頭葉という部位が何らかの原因で萎縮を起こし、正常に脳の機能が働かなくなることで発症します。
認知症という名称がついていますが、もの忘れや記憶障害がみられることは少ないのが特徴です。
欧米では遺伝性による発症が多く報告されていますが、日本国内では遺伝が原因の発症はみられません。発症するメカニズムは不明ですが、タウたんぱくと呼ばれる物質が萎縮を起こす原因ではないかと考えられています。
前頭側頭型認知症の症状や経過
前頭側頭型認知症の主な症状として、社会性の低下による異常な行動や人格の変化が挙げられます。
理性をつかさどる前頭葉の働きが低下するので、我慢がきかない性格になったり、わがままを押し通そうとしたりする様子がみられます。同じタイミングで何度も同じ行動を繰り返す「常同行動」が現れるのも特徴です。
また、ほかの認知症と比べて発症する年齢が若く、50代〜60代で発症するケースが多いです。加齢による性格の変化と勘違いされることもあり、体力があり元気な年代なので、周囲の介護者に暴力を振るう危険性がある点に注意が必要です。
しかし前頭側頭型認知症が進行するにつれて、徐々に異常な行動や性格の変化は目立ちにくくなり、意欲の低下が顕著になっていきます。何事にも無気力・無関心になり、寝たきりになる可能性が高いです。
「認知症かも?」と思った時の相談先・診療科
高齢の両親など、家族が認知症かもしれないと疑われる時には、早めに専門病院での検査・診断を受けることが重要です。
認知症を発症すると根本的に治療することは困難ですが、MCIの段階であれば回復の見込みがあるほか、認知症の初期の段階から治療を行うことで進行を遅らせることができるからです。
しかし認知症の検査・診断のために、どの診療科を受診したら良いのか、本人が病院を嫌がる時にはどう対処すれば良いのか迷う方も多いでしょう。
ここでは「認知症かも?」と思った時の相談先や、受診科についてご紹介します。
認知症の診療科は精神科・脳神経内科など
認知症の検査・診断に対応しているのは、主に精神科・脳神経内科と呼ばれる診療科です。心療内科や老年科といった診療科でも認知症の検査に対応していることがあります。
認知症を専門とする病院では「もの忘れ外来」という窓口を設置していることも多く、認知症が疑われる方本人だけではなく、周囲の家族からの相談を受け付ける「もの忘れ相談」に対応した病院もあります。これらの診療科や窓口を設置している病院が近隣にある場合には、積極的に受診してみると良いでしょう。
なお、認知症の診療科や検査費用については下記の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:認知症の病院は何科を受診する?診療科や検査費用についても解説
地域包括支援センターでも相談に対応
認知症なのか見分けがつかない場合や、本人が病院を嫌がる場合、認知症の専門病院がどこにあるのかわからない場合などは、地域包括支援センターに相談してみるのも良いでしょう。地域包括支援センターは、高齢者の健康に欠かせない医療・福祉について案内を受けられる施設です。
認知症の相談に加えて、将来の要支援・要介護認定のための手続きなど、さまざまな相談に対応してもらうことができます。まずは認知症が疑われる方がお住まいのエリアの地域包括支援センターに相談して、病院の紹介を受けると良いでしょう。
まずはかかりつけ医に相談を
認知症が疑われる方の健康状態をよく把握しているかかりつけ医がいる場合には、認知症についてかかりつけ医に相談してみるのも効果的です。本人が認知症の検査を拒否している場合にも、かかりつけ医からの勧めであれば素直に受け入れられるケースは多く、既往歴や服用中の薬などを専門病院に連携することで、スムーズな治療につながるメリットもあります。
相談するかかりつけ医は、精神科や脳神経内科の医師でなくとも構いませんので、認知症が疑われる言動がみられた時には早めに相談するようにしてください。
認知症の検査・診断方法
認知症が疑われる家族とともに病院を受診する時には、認知症検査の大体の流れや診断方法について把握しておくことをおすすめします。
どのように認知症の診察が行われるのかを知っておくことで、スムーズに受診できるようになるからです。ここでは認知症の検査・診断方法として、次の3つを解説します。
- 本人・家族への問診
- 神経心理検査
- 脳画像検査
それぞれ順番にご紹介します。
本人・家族への問診
認知症の検査でまず行われるのが、本人や家族への問診です。受診するきっかけとなった言動や、症状が現れ始めたタイミング、持病の有無などを確認しながら、認知症かどうかの判断材料に加えます。ほかの病気と併発してないかを調べるために、血液検査や尿検査を行うこともあります。
もし本人が受診に乗り気でなかった場合、家族からの情報が重要になりますので、これまでの症状や言動についてスムーズに説明できるよう、メモを作成しておくことをおすすめします。
関連記事:認知症の検査では何が行われる?病院での診断の方法・流れを解説
神経心理検査
神経心理検査とは、医師からの質問や簡単なテストを受けることで、認知症の疑いがあるかを調べる検査を指します。
主に「改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」などが実施され、認知機能の低下度合いを調べます。レビー小体型認知症の場合には、幻視・錯視の症状を調べるために、「パレイドリアテスト(錯視誘発テスト)」が用いられることもあります。
脳画像検査
脳画像検査は、MRIやCTを使って脳の断面図を撮影し、脳の萎縮が発生してないかを確認します。
海馬周辺に萎縮がみられる場合にはアルツハイマー型、前頭葉・側頭葉が萎縮している場合は前頭側頭型の認知症であると判断できます。
また、脳の血流を調べるSPECT検査により、血流が低下している部位がないかを調べることもあります。後頭葉への血流低下がみられる場合には、レビー小体型認知症が疑われます。
認知症の治療方法
認知症の治療にあたっては、症状を根本的に回復させる方法は今のところ確立されていないため、対症療法が中心です。
抗認知症薬や向精神薬といった薬物療法、認知機能トレーニングや理学療法などの非薬物療法の2種類が実施されます。
なお、MCIの場合には治療によって健常な状態に戻ることも多く、慢性硬膜外血腫・正常圧水頭症といった病気の場合には手術によって完治する可能性もあります。認知症が疑われたタイミングですぐに受診することで、QOLを低下させることなく日常生活を送りやすくなるでしょう。
ここでは認知症の治療方法として、薬物療法・非薬物療法をそれぞれ解説します。
関連記事:認知症の検査では何が行われる?病院での診断の方法・流れを解説
薬物療法
投薬により認知症の進行を抑える薬物療法では、認知症の種類や症状に合わせて一人ひとり適切な薬剤を調整して投与します。
アルツハイマー型の場合、4種類の抗認知症薬が認可されており、医師の判断で処方して治療を行います。幻覚・妄想が強く現れている場合には、向精神薬を用いるケースもあります。
血管性認知症の場合には、血液をサラサラにする薬や血圧を下げる薬を投与し、生活習慣病を患っている場合には持病に合わせた薬を使用します。レビー小体型認知症では、パーキンソン病の治療薬を使用するほか、睡眠中の怪我を防止するために不眠症治療薬を用いることもあります。
このように、認知症の種類や患者様一人ひとりの症状に合わせた薬剤を調整しながら治療を行うので、処方された薬について疑問がある時には、気軽に医師や薬剤師に相談してみると良いでしょう。
非薬物療法
非薬物療法としては、運動療法や作業療法、過去の出来事を思い出して記憶力を改善する「回想法」、計算ドリルなどに取り組む認知リハビリテーションや、音楽療法・園芸療法などが挙げられます。
生活習慣病を患っている場合には、食事・運動・睡眠を中心に生活習慣を改善する指導を行ったり、禁酒・禁煙のための対策を実施したりするケースもあります。運動障害・歩行障害により怪我のリスクが高まっている場合には、自宅の段差をなくす介護リフォームを実施して、安心して過ごせる環境を整えることも大切です。
まとめ
認知症は、アルツハイマー病などの病気が原因で脳の神経細胞が損傷を受け、もの忘れをはじめとする認知機能が低下して日常生活が困難になる症状です。認知症の種類は一つだけではなく、アルツハイマー型認知症に加えて血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種類があります。それぞれの認知症によって、症状の現れ方や経過・進行が異なるため、正しく知識を得て適切なケアに取り組むことが大切です。
また、いずれの認知症の場合にも、認知症が疑われた段階ですぐに専門病院を受診し、早期発見・早期治療に努めることで、本人のQOLが低下することを防ぎ、家族をはじめとする介護者の負担を軽減することにもつながります。
まずはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談する、もしくは「もの忘れ外来」「もの忘れ相談」を設置している精神科・脳神経内科の病院を受診して、早めに専門医の検査と診断を受けるようにしましょう。