認知症の始まり・兆候とは?早期発見のためにできることを解説

脳の神経細胞へのダメージにより、もの忘れをはじめとする症状が現れる認知症は、早期発見・早期治療が非常に重要です。認知症の始まり・兆候とされる初期症状を早期に発見し、病院での治療を受けることにより、症状の悪化を遅らせることができるからです。

では、認知症の始まり・兆候とされる初期症状には、どのような症状が挙げられるのでしょうか。

本記事では、認知症の代表的な初期症状とともに、周囲の家族が認知症の早期発見のためにできること、そして認知症の疑いがある方が症状の進行を抑えるためにできる行動についても解説します。

目次

認知症の始まり・兆候とされる4つの初期症状

認知症の始まり・兆候とみなされる認知症の初期症状には、主に以下の4つが挙げられます。

  • もの忘れ
  • 理解力・判断力の低下
  • 集中力・注意力の低下
  • 趣味嗜好・性格の変化

これらの症状によって本人の言動がどのように変化するのかを解説しますので、初期症状が現れているかどうかを判断する時に活用してみてください。

もの忘れ

認知症の特徴的な症状として、「もの忘れ」が挙げられます。認知症によるもの忘れは、加齢によるもの忘れとは異なり、忘れていること自体が思い出せなくなることが特徴です。

たとえば、高齢の方の中には昨日の夕食のメニューを聞かれても、すぐに思い出せないケースは少なくありません。しかし時間をかければ思い出せる方や、ヒントを出すことで思い出せる方がほとんどです。

一方の認知症によるもの忘れは、夕食を食べたこと自体を忘れてしまう状態です。夕食を忘れていることを自覚することが難しく、日を追うごとにもの忘れの症状も悪化していく傾向にあります。

理解力・判断力の低下

認知症の初期症状には、理解力・判断力の低下も挙げられます

周囲の家族との会話についていけなくなったり、買い物の時の金額計算が困難になったりと、外からの情報を素早く理解・判断する力が低下してしまうのが特徴です。

その場に応じた臨機応変な対応が難しくなり、信号が赤なのに渡ろうとしてしまったり、青に切り替わっても渡るタイミングがわからなくなったりすることもあります。

集中力・注意力の低下

認知症の兆しとして、集中力・注意力の低下がみられることもあります

これまで集中して読んでいた新聞や本を読まなくなったり、テレビ番組の話に追えなくなりテレビを見る習慣がなくなったりすることもあります。周りの出来事に関心がなくなり、お金の管理ができなくなるほか、以前はできていた家事・買い物に手間取るようになるなどの変化もみられます

趣味嗜好・性格の変化

認知症の兆候には、これまで温厚だった方が急に怒りっぽい性格になるなど、趣味嗜好・性格の変化が起こることも多いです。

以前と比べて意欲が低下し、趣味だった活動を急に辞めてしまう方や、身だしなみに無頓着になる方もいらっしゃいます。

怒りっぽく暴力的な性格に変化するケースのほか、やる気が低下して落ち込むことが増え、うつ病のような症状になるケースもあります。

周囲の家族が認知症の早期発見のためにできること

前述した認知症の始まり・兆候のサインを見逃すことなく、周囲の家族が認知症を早期発見するためには、以下のような行動を心掛けることが大切です。

  • 高齢の家族と定期的に会話する
  • 認知症が疑われたら本人不在でも「もの忘れ外来」へ
  • 受診を嫌がる場合はかかりつけ医に相談する

早期発見・早期治療によって認知症の悪化を防ぐためにも、これらのうちできることから始めてみましょう。

高齢の家族と定期的に会話する

認知症の兆候であるもの忘れなどの初期症状は、本人の方との会話で気づくケースが多いです。

何度も同じことを尋ねるようになったり、「今日は何月何日だっけ?」と、自分が置かれた状況がうまく認識できない様子から、認知症の疑いを持つ方もいらっしゃいます。このような認知症の始まりにいち早く気づくため、高齢の家族と定期的に会話することを心掛けると良いでしょう。

もの忘れだけで認知症かどうかを判断することは難しいですが、認知症のもの忘れの特徴である「忘れていること自体を思い出せない」状態になっていないか、意識的にチェックしてみると良いでしょう。加齢による一時的なもの忘れではなく、認知症によるもの忘れが疑われる場合には、早めに医療機関へ相談しましょう。

関連記事:家族が認知症かも?初期症状に対してのチェックリストを確認しよう

認知症が疑われたら本人不在でも「もの忘れ外来」へ

認知症の疑いがある場合、なるべく早めに病院を受診して診断を受けることが望ましいですが、認知症の検査を受けることに抵抗がある場合や、受診を拒否する場合などは、本人不在であっても「もの忘れ外来」などに相談してみることをおすすめします。もの忘れ外来を設置する病院の中には、家族からの相談にも対応しているところもあります。

本人の方の診察ではないため保険適用外となる点に注意が必要ですが、認知症が疑われる行動や症状について医師に相談し、専門家の意見を求めることにより、今後の行動にも移しやすくなるでしょう。

当院・丹沢病院について

当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。(診断により、入院も可能です)

なお、ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、当院でも医師による「もの忘れ相談」 を開設しています。

※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

受診を嫌がる場合はかかりつけ医に相談する

認知症の診断は、精神科や心療内科を設置する病院を受診する必要があります。しかし本人が認知症専門病院への受診を拒否する場合には、まずは安心して相談できるかかりつけ医に協力を仰ぐと良いでしょう。

信頼できる医師から認知症の可能性について話してもらい、家族ではない第三者からの意見を聞くことにより、受診に前向きになるケースもあります

家族に対しては意地を張ってしまう方であっても、医師からの助言であれば素直に耳を傾ける方も少なくありません。嘘をついて無理やり受診させたり、本人のプライドを傷つけてしまうような物言いは避け、かかりつけ医と連携しながら認知症の診察を促すと良いでしょう。

認知症の疑いがある方の進行を抑える予防方法

本記事でご紹介した認知症の予兆・兆候が見られる場合には、早期受診・早期治療と並行しながら、日常生活の中で認知症を予防、または進行を遅らせるための対策に取り組むと良いでしょう。

ここでは認知症の症状の予防・抑制につながる3つの方法についてご紹介します。

  • 生活習慣病を予防する
  • 他者とのコミュニケーションを取る
  • 生活に有酸素運動を取り入れる

それぞれの予防方法を詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

生活習慣病を予防する

健康な方と比較して、糖尿病・高血圧などの生活習慣病を持つ方ほど、認知症の発症リスクが高まることが判明しています。生活習慣病を引き起こす生活習慣を送っている方は生活習慣の見直し、治療が必要な生活習慣病を放置している方はすぐに治療を受けることが大切です。

生活習慣病を予防するためには、定期的に健康診断を受けることに加え、適切な食事・睡眠・運動を心掛け、健康の維持・増進に努めることが大切です。

他者とのコミュニケーションを取る

認知症を予防し、認知症の早期発見にもつながる方法として、他者と積極的にコミュニケーションを取ることが挙げられます。他者との会話は脳に刺激を与え、認知症の発症・進行リスクを抑えることが可能です。精神的な落ち着きや、生活の豊かさにもつながり、高齢の家族のQOL(生活の質)を維持することに役立ちます。

また、古くからの友人や家族とのコミュニケーションよりも、初対面の相手との会話の方が、脳への刺激が増えて神経細胞の活性化が期待できます。地域のコミュニティや趣味のコミュニティなど、さまざまな関係性の方とコミュニケーションを取れるような場を設けることで、認知症の予防・抑制につながります。

すでに要支援・要介護認定を受けている方の場合、介護施設でのデイケアを活用し、利用者の方やスタッフの方とのコミュニケーションを図るのも良いでしょう。

生活に有酸素運動を取り入れる

日々の生活に有酸素運動を取り入れ、脳への血行を改善することにより認知症の予防・抑制効果が期待できます適度な運動は気分をリフレッシュさせるほか、生活習慣病の予防にも効果的です。ゴルフやヨガ、水泳など、他者と交流しながら取り組む運動であれば、さらに脳を活性化させる効果が見込めます。

中でも手軽に取り組めるのは、散歩・ウォーキングです。ケガのリスクが少なく、周囲の家族が付き添うことでコミュニケーションを取る機会も増えますので、積極的に取り入れてみると良いでしょう。

まとめ

認知症の始まり・兆候に挙げられる初期症状として、もの忘れや理解力・判断力の低下、性格の変化などが挙げられます。中でも認知症によるもの忘れは、加齢に伴うもの忘れとは異なり、「忘れていること自体を思い出せない」という特徴があります。

家族の認知症を早期発見するためには、日頃から定期的に会話を交わし、少しでも認知症が疑われる時には「もの忘れ外来」での相談、またはかかりつけ医に相談してみることが大切です。

本記事でご紹介してきた認知症の予防・抑制方法も取り入れながら、家族の認知症の早期発見に努めていきましょう。

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この記事の監修者

丹沢病院院長。認知症サポート医の資格所有。認知症に関する多くの講演実績を持っており、患者だけでなく、その家族に対しての不安・悩みにも寄り添い、サポートを行ってきました。「認知症はとにかく早期に発見し、治療することで、進行を緩やかにすることができる」ということです。あなた自身のためにも、そしてご家族のためにも、不安に感じられることがございましたら、まずは当院にお気軽にご相談ください。

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