認知症の病院は何科を受診する?診療科や検査費用についても解説

家族が認知症の疑いがある時、まずは認知症の専門医の検査・診断を受けることが大切です。しかし認知症の検査を受けるために、病院の何科を受診すれば良いかわからない方は少なくありません。

本記事では、認知症で病院を受診する時に、どの科に連絡すれば良いのかをご紹介します。正しい診療科に足を運んでスムーズに検査・診断を受けられるよう、認知症の検査が受けられる病院について理解を深めておきましょう。

目次

認知症は精神科・脳神経内科の病院を受診しましょう

家族が認知症の疑いがある場合、近くの精神科・脳神経内科の病院を受診することをおすすめします。

「もの忘れ外来」など、認知症の相談を専門的に受け付ける体制がある病院であれば、スムーズに認知症の検査・診断を受けることが可能です。

近隣で精神科・脳神経内科がある病院が見つからない場合や、日頃から通院しているかかりつけ医がいる場合には、かかりつけ医に相談してみるのもおすすめです。かかりつけ医が把握している既往歴や服用中の薬などの情報をもとに、認知症の専門病院を紹介してもらうことで、本人の状況を的確に連携してもらえるからです。

かかりつけ医がいない場合には、高齢者の医療・福祉について幅広く相談できる「地域包括支援センター」に問い合わせてみるのも良いでしょう。家族が病院の受診を嫌がる場合にも、まずは地域包括支援センターでの相談を利用してみると効果的です。

認知症の検査が受けられる診療科と役割

認知症の検査・診断は、特定の科だけではなくさまざまな診療科で受付しています。ここでは認知症を診療してもらえる以下の5つの診療科について、それぞれの特徴や役割をご紹介します。

  • 精神科
  • 心療内科
  • 脳神経内科・脳神経外科
  • 老年科
  • もの忘れ外来

精神科

精神科は、認知症をはじめとする心理症状に対応できる病院です。認知症を専門に診療している精神科も多く、認知症本人の方に寄り添った診察を受けられる利点があります。家族が認知症かもしれないと疑われる場合には、まずは精神科への受診を検討してみましょう。

心療内科

心療内科は、主にストレスによる身体の不調(心身症)の診察を受け付けていますが、認知症の検査・診断に対応する病院も増えてきています

精神科出身の医師が心療内科を開業している病院のほか、内科出身の医師が開業しているケースもあるので、事前に認知症の診察に対応しているかを確認しておくと良いでしょう。

脳神経内科・脳神経外科

脳神経内科・脳神経外科は、脳・脊髄・神経などの病気を診察する病院で、考えることや覚えることに問題を抱えた時に受診すべき科です。脳出血・脳梗塞やパーキンソン病などの脳疾患の診察に対応しており、認知症も脳の働きが関係していることから、専門的な検査が受けられることが多いです。

老年科

老年科は、高齢者に対する総合医療を提供している病院で、高齢者特有の心身の不調に加え、もの忘れなどの認知症の症状にも対応しています。

病院によっては「高齢診療科」「老年病科」「老年内科」などと呼び方が異なる場合もありますが、いずれの病院でも認知症の検査・診断に対応していることが多いです。

もの忘れ外来

もの忘れ外来は、精神科・脳神経内科・老年科などの認知症を専門とする医師・病院が設置している、認知症についての専門外来です。認知症についての専門的な知見を持った医師が、認知症かどうか、他の病気の可能性があるかを総合的に診断しているのが特徴です。

神経心理学検査や脳画像検査に対応しているところも多いため、もの忘れ外来を設置している精神病院などを受診できる場合には、積極的に検討すると良いでしょう。

当院・丹沢病院について

認知症は、症状によっては薬と保持機能の活用で発症や進行を遅らせることができ、早い治療によって健康な時間を長くすることができます

当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。(診断により、入院も可能です)

なお、ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、医師による「もの忘れ相談」 を開設しています。

※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

認知症の検査の流れ・検査方法

精神科やもの忘れ外来で認知症について受診した場合、次のような流れで検査・診察が行われます。

  • 面談・問診
  • 身体検査
  • 神経心理学検査
  • 脳画像検査

まずはもの忘れの症状などについて、本人や家族の方に問診しながら診察を行い、血液検査や尿検査などを実施してほかの病気を併発していないかどうかを確認します。

その後、本人の方への簡単な質問・テストを行う神経心理学検査、CT・MRIを使った脳画像検査を経て、認知症かどうかを総合的に判断します。

なお、認知症検査の流れやそれぞれの検査方法については、下記のページでも解説しているので参考にしてみてください。

関連記事:認知症の検査では何が行われる?病院での診断の方法・流れを解説

認知症の診断に必要な検査費用

認知症で病院を受診した際に、専門的な検査を受けることになった場合、必要となる費用は数千円〜2万円程度です。認知症の検査費用は医療保険が適用されるので、1割〜3割の自己負担額で収まります

ただし、一度に実施する検査項目が多くなるほど検査費用は高額になる傾向があるため、支払いについて不安な場合には事前に病院へ相談しておくと安心です。

なお、下記のページでは認知症の検査費用を含めた「入院費用」について解説しています。認知症で入院した場合にかかる費用について詳しく知りたい方は、併せてご覧ください。

関連記事:認知症で入院した場合の費用とは?専門病棟が詳細を解説

認知症の方本人が受診を嫌がる場合の対処法

家族に認知症の疑いがある場合、周囲の家族だけではなく本人も自分自身の変化や不調を自覚し、不安や焦りを感じているケースが多いです。しかし本人のプライドから、認知症の受診を嫌がるケースは少なくありません。認知症は早期発見・早期治療によって症状の進行を遅らせることが可能ですが、認知症が進行してしまうと治療の効果が薄れてしまいます。

そこで認知症の方本人が病院を嫌がる場合には、次のような方法でなるべく早めの受診を促すことが大切です。

  • まずはかかりつけ医に相談する
  • 本人のプライドを傷つける表現は使わない
  • 家族と連携しながら説得する

それぞれ詳しく解説していきましょう。

まずはかかりつけ医に相談する

日頃から通院しているかかりつけ医がいる場合には、事前にかかりつけ医と連携し、医師の口から認知症の診察を受けるように促してもらうのが効果的です。家族が受診を促しても拒否されてしまう場合、家族に対して甘えたり、意地を張ったりしていることが考えられます。

ですが家族からの勧めには拒否する方であっても、専門的な知見を持った医師からの話であれば、素直に受け入れられるケースは少なくありません。健康診断の一環として受診を勧めたり、脳に異常がないかを調べるために受診を勧めたりと、伝え方を工夫してもらうことで受診に前向きになってもらえることも多いです。

本人のプライドを傷つける表現は使わない

認知症の受診を勧める時には、本人のプライドを傷つけるような表現を避けることも重要です。これまで元気に活動してきた方が、急に子どもや親戚から「認知症じゃないのか?」と指摘されてしまうと、プライドが傷つき、より頑固に受診を拒否してしまうケースも考えられます。認知症の兆しがある場合は本人にとっても自覚があることも多く、不安や焦りが高まっている時にプライドを傷つけられてしまえば、心に深い傷を負ってしまうでしょう。

そのため認知症の受診を進める時には、本人の方の立場や気持ちに寄り添いつつ、厳しい言葉や否定の言葉を使わないことが大切です。「自分の受診についてきてほしい」などと嘘をついて、無理やり本人を受診させるのも避けた方が良いでしょう。周囲の家族との信頼関係が崩れてしまうと、今後の治療や介護でも苦労することになります。

本人の方と誠実に向き合いながら、「あなたのことが心配だから、一度受診してほしい」「治療で進行を遅らせられるかもしれないから」など、言葉を選びながら本心を伝えるようにしてください。

家族と連携しながら説得する

認知症が疑われる方本人の妻・夫から受診を勧められたり、子どもから受診を促されたりするだけでは、なかなか病院に行ってくれないことが多いです。

そんな時には、孫や親戚などと連携しながら、説得するのも効果的です。甘えや意地が出てしまう相手ではなく、少し距離感が異なる相手から説得してもらうのがポイントです。

たとえば同年代の親戚から「あそこの家の●●さんも、認知症で受診して治療して良くなったそうだよ」と話してもらったり、孫の口から「おじいちゃんに長生きしてほしいから、一緒に病院に行こう」などと促してもらうことで、受診に前向きになってもらえるかもしれません。

なお、認知症の親に認知症の診察を受けてもらう方法として訪問診療(往診)を依頼したり、地域包括支援センターに足を運んでもらったりする方法も考えられます。詳しくは下記のページでまとめているので、親が受診を拒否する場合に目を通してみてください。

関連記事:認知症の親を病院に連れて行く方法は?受診しないとどうなるかも解説

まとめ

認知症の検査・診断を受けるためには、お近くの精神科・脳神経内科の病院を受診するとスムーズです。ほかにも心療内科・老年科の病院、もしくは「もの忘れ外来」を設置している病院でも認知症の診察に対応しているため、近隣の病院を調べてみることをおすすめします。受診の際には、事前に認知症の診療に対応しているかどうかを確認しておくと、より安心です。

認知症の検査費用は、数千円〜2万円程度が目安となっており、医療保険の自己負担割合や実施する検査内容によっても異なります。

また、認知症の方本人が受診を嫌がる場合には、まずはかかりつけ医に相談したり、家族と連携しながら説得するのも有効です。

認知症の進行を遅らせ、長く元気な姿でいてもらうためにも、認知症の早期受診を心がけましょう。

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この記事の監修者

丹沢病院院長。認知症サポート医の資格所有。認知症に関する多くの講演実績を持っており、患者だけでなく、その家族に対しての不安・悩みにも寄り添い、サポートを行ってきました。「認知症はとにかく早期に発見し、治療することで、進行を緩やかにすることができる」ということです。あなた自身のためにも、そしてご家族のためにも、不安に感じられることがございましたら、まずは当院にお気軽にご相談ください。

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