家族が認知症かも?初期症状に対してのチェックリストを確認しよう

家族のもの忘れがひどくなり、「認知症かも?」と感じた場合には、すぐにかかりつけ医に相談して診察を受けることが大切です。しかし認知症なのかどうか確信できない場合や、本人が通院に抵抗がある場合には、病院を受診することが難しいこともあるでしょう。

そこで活用したいのが、認知症かどうかを自分たちで簡易的にチェックできる診断テストです。簡単な質問に答えるだけで認知症の可能性を判断できる予測テストや、認知症の初期症状のチェックリストを使うことで、病院を受診しなくても認知症の早期発見につながります。

本記事では、家族が認知症かもと感じた時に役立つ予測テスト・チェックリストについてご紹介します。

目次

認知症の早期発見に役立つ「大友式認知症予測テスト」

認知症の早期発見のための診断テストとして、公益社団法人認知症予防財団による「大友式認知症予測テスト」がよく用いられています。このテストでは、以下の表にある通り、10個の質問に対する点数を合計して認知症の可能性をチェックします。以下の質問に対して「ほとんどない」場合は0点、「時々ある」は1点、「頻繁にある」は2点を付け、それぞれの点数を合計します。

※テストを実施するのは、認知症が疑われる方本人、または周囲の家族でも問題ありません。

項目点数
1同じ話を無意識に繰り返す
2知っている人の名前が思い出せない
3物のしまい場所を忘れる
4漢字を忘れる
5今しようとしていることを忘れる
6器具の説明書を読むのを面倒がる
7理由もないのに気がふさぐ
8身だしなみに無関心である
9外出をおっくうがる
10物(財布など)が見当たらないことを他人のせいにする
合計
引用:認知症とは – 認知症予防財団

※採点方法:ほとんどない=0点、時々ある=1点、頻繁にある=2点

引用:認知症とは – 認知症予防財団

合計点数が8点以下の場合には正常、9点〜13点の場合は要注意です。14点以上は認知症の初期症状が出ている可能性が高く、精神科などの病院での検査が推奨されます

合計点数が低かったとしても、「認知症かも?」と気になる言動がみられる場合には、かかりつけ医や地域包括支援センターで相談してみると良いでしょう。

認知症の初期症状のチェックリスト

認知症の初期症状では、以下の5つのような症状がみられることが多いです。

下記のチェックリストに当てはまる症状が多いほど、認知症を発症している可能性が高く医師の診断・治療を受ける必要性が高まります。

  • 記憶障害(もの忘れ):何度も同じことを聞く、同じものを買う
  • 見当識障害:今日の日付や通り慣れた道がわからなくなる
  • 理解力・判断力の低下:テレビの内容が理解できない
  • 実行機能障害:料理の味付けが変化する、家電の使い方を忘れる
  • 性格の変化:怒りっぽくなる、ふさぎ込んで何事もおっくうになる

それぞれのチェック項目について、どのような行動が当てはまるのかを解説していきます。

記憶障害(もの忘れ)

記憶障害は、いわゆる「もの忘れ」の症状であり、何度も同じことを聞いたり、同じものを買ったりしてしまう症状がみられます。

加齢に伴うもの忘れでは、過去の体験の一部を忘れているケースが多く、時期や人名などのヒントを出すとすぐに思い出せることが多いです。一方の認知症のもの忘れは、過去の体験をすべて忘れてしまうという違いがあります。

加齢によるもの忘れは、本人が記憶力の低下を自覚することができますが、認知症のもの忘れは忘れていること自体を認識できない場合が少なくありません

見当識障害

見当識障害は、自分が置かれている状況を正しく認識できなくなる症状を指します。たとえば、今日の日付がわからないケース、自宅までの帰り道で迷ってしまうケースなどが代表的です。

施設への入所や家族との同居のための引越しなど、環境が大きく変化するタイミングで強く現れることがあります。

見当識障害は認知症が進行してから顕著となることが多いですが、初期症状としてみられることもあります。

理解力・判断力の低下

理解力・判断力が低下することも、認知症の初期症状として現れます。主な症状としては、視聴しているテレビの内容が理解できなかったり、料理や掃除でのミスが多くなったりすることが挙げられます

会話の内容が理解できずにうまくコミュニケーションが取れなくなったり、車の運転でミスをしてしまうこともあります。

実行機能障害

実行機能障害とは、計画や手順をもとに行動することが難しくなる症状です

たとえば、料理や洗濯の手順がわからなくなったり、昔から使っている家電がうまく操作できなくなったりする行動がみられます。一つひとつの料理は作れても、ご飯を炊きながら味噌汁を作るなど、同時並行で作業ができなくなるのが特徴です。

料理がうまく作れなくなるため味付けが大きく変化するほか、冷蔵庫にあるはずの食材を何度もスーパーで買ってきてしまうケースもあります。

性格の変化

穏やかな性格だった方が怒りっぽい性格になったり、周りへの気遣いができず頑固になってしまったりと、性格の変化がみられることも認知症の初期症状にあたります。

精神的に落ち込んで抑うつ状態になるケースや、長く続けてきた趣味を楽しめず意欲が低下するケースも挙げられます。

ほかにも、身だしなみに気を遣わなくなったり、ふさぎ込んで何に取り組むにもおっくうになってしまうことも、認知症が疑われる変化の一つです。

認知症の診断テストに当てはまった場合に家族ができる対策

ここまでご紹介してきた「大友式認知症予測テスト」や認知症の初期症状のチェックリストに当てはまる場合、早めに医師の診断・治療を受けることが大切です。

それと並行して、認知症の悪化や事故・ケガを防ぐため、以下のような対策に取り組むのも良いでしょう。

  • 生活習慣を見直す
  • 有酸素運動を取り入れる
  • 認知トレーニングに取り組む

それぞれの具体的な対策方法をご紹介します。

なお、認知症は一気に進む場合もあります。下記の記事もご参考ください。

関連記事:認知症が一気に進む原因とは?進行を遅らせるためにできること

生活習慣を見直す

認知症は緩やかに進行する症状ですが、事故やケガによって寝たきりとなったり、生活習慣病を併発したりすると、症状が一気に悪化する原因となります。高血圧・糖尿病といった生活習慣病は、認知症を発症するリスクを高めるとされているため、認知症予防のためにも生活習慣の見直しが重要です。

たとえば、塩分・糖質の摂りすぎやお酒の飲み過ぎなどに注意すると、認知症の予防につながります。バランスの良い食生活や、明るくなったら起床して暗くなったら就寝する睡眠サイクルを心がけることも、認知症対策として効果的です。

有酸素運動を取り入れる

認知症は脳細胞の減少や働きの低下によって引き起こされると考えられており、脳への血流を増やす有酸素運動は認知症の予防・対策に効果的です。ランニング・ジョギングのようなハードな有酸素運動である必要はなく、散歩や水泳のような身体への負担が少ない運動を選んで取り組むのがおすすめです。

一人だと続かない場合には、家族や友人と一緒に運動を習慣化すると良いでしょう。他者とコミュニケーションを取りながら有酸素運動に取り組むことは、言語中枢が刺激されて認知機能の維持にもつながり、認知症の進行を遅らせることができます

認知トレーニングに取り組む

認知症の予防のため、脳トレやパズル、計算ドリルといった認知トレーニングに取り組むのも効果的です。脳への刺激を増やすことで脳細胞を活性化し、認知機能の維持につながります。

そのため子どもや孫と一緒にテレビゲームを楽しんだり、同じ趣味を持った方と囲碁・将棋・麻雀などで遊ぶのもおすすめです。

ほかにも、指先を活用する楽器の演奏や、編み物・刺繍などの手芸に取り組むのも良いでしょう。日常生活における料理・洗濯・掃除といった家事も、手順を考えて複数の作業を同時に進める過程が脳への刺激となるため、周囲の家族が先回りして済ませてしまわないように気をつけましょう。

家族が認知症かも?と思った時は専門医や地域包括支援センターに相談を

家族が認知症かもしれないと感じた時には、本記事で解説してきた診断テストやチェックリストで簡単に調べることが可能です。しかし認知症の症状には個人差があるほか、アルツハイマー型やレビー小体型、脳血管性など認知症にもいくつかの種類があります。そのため正確な診断のためには、神経心理学検査や脳画像検査をもとにした専門医の診察を受けることが大切です。

認知症の診断は、「もの忘れ外来」などを設置する精神科や心療内科で受けることができますが、近隣に認知症の専門病院が見つからない場合には、まずかかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらうと良いでしょう。かかりつけ医がいない場合、高齢者の介護・医療についての相談を受け付けている「地域包括支援センター」に相談してみてください。

当院・丹沢病院について

認知症は、症状によっては薬と保持機能の活用で発症や進行を遅らせることができ、早い治療によって健康な時間を長くすることができます

当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。(診断により、入院も可能です)

なお、ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、医師による「もの忘れ相談」 を開設しています。

※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

まとめ

家族が認知症かもしれないと思った時には、本記事で解説してきた診断テスト・チェックリストを活用して、簡易的に調べてみることが効果的です。認知症の初期症状に当てはまるものが多い場合には、認知症を発症している可能性が高くなるため、早期治療によって症状の悪化を防ぐためにも早めに病院を受診することが大切です。

認知症の診断テスト・チェックリストに当てはまる項目が多かった場合には、生活習慣の見直しや有酸素運動、認知トレーニングなどを周囲の家族の方がサポートしながら実施すると、認知症の予防・対策につながります

ただし、本人や家族による認知症のテストも万全ではないため、「認知症かも?」と思われる言動があった際にはなるべく早めに専門医の診察を受けるようにしてください

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この記事の監修者

丹沢病院院長。認知症サポート医の資格所有。認知症に関する多くの講演実績を持っており、患者だけでなく、その家族に対しての不安・悩みにも寄り添い、サポートを行ってきました。「認知症はとにかく早期に発見し、治療することで、進行を緩やかにすることができる」ということです。あなた自身のためにも、そしてご家族のためにも、不安に感じられることがございましたら、まずは当院にお気軽にご相談ください。

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