認知症で入院した場合の費用とは?専門病棟が詳細を解説

認知症が進行すると、専門病棟に入院して治療・介護を受けることも少なくありません。急な入院が決まった場合には、どれだけ入院費用がかかるのか気になる方も多いでしょう。

認知症の入院では公的医療保険が利用できるため、1割〜3割の自己負担割合で費用が抑えられます

ただし、入院保証金や交通費など保険の適用外の費用も発生するため、事前に大まかな予算を確認しておくことが大切です。

本記事では、親御さんなどのご家族が認知症で入院した場合の費用の内訳や、支払い方法・支払いタイミング、入院費用の支払いが難しい場合の対処法などについてご紹介します。

目次

認知症で入院できるケースとは?

認知症の方は自宅や施設での治療・介護を選ぶ方が多いです。

しかし介護拒否や暴力などを理由に、入院治療が必要となるケースも少なくありません。また、介護に携わる方が限界を感じた場合、介護疲れに陥った場合にも入院治療を選ぶことが可能です。

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認知症に伴って怪我をされた方が、そのまま入院して認知症の治療を行うこともあります。認知症の方の入院を受け付けているのは、「もの忘れ外来」などが設置された認知症専門の精神科が中心です。

一部の病院では、通院による自立支援を利用できる場合もあるため、自宅・施設での介護に限界を感じた時には、まずかかりつけ医や認知症の専門医に相談してみることをおすすめします。

なお、親が病院に行きたがらないかも…と不安な方は、下記の記事もご覧ください。

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認知症で入院した場合の費用目安

認知症の入院費用は、月7万円〜30万円ほどが目安になります。

認知症の入院費用のみであれば月7万円前後が平均的ですが、医療保険の自己負担割合や差額ベッド代、家族が面会するための交通費などを含めると、30万円以上の支払いとなることもあります

※これらの入院費用についての内訳については本記事の後半で解説しています。

認知症の入院費用は、症状や治療内容などによって大きく変動するため、事前に大まかな費用を把握しておきたい場合には、病院に直接問い合わせてみるのが確実です。

認知症の入院費用の支払いタイミング

認知症の入院費用が請求されるのは、1ヶ月ほどの短期入院であれば退院時であることが多いです。長期間にわたり入院する場合には月末締め・翌月末払いで請求書が発行されるケースが大半です。

また、入院時に入院保証金を預け、入院費用に充当する病院もあります。

なお、家族が面会するための交通費や、入院生活で必要となる日用品代などは、入院中に随時費用が発生する点に注意しましょう。

認知症の入院費用の支払い方法

認知症の入院費用の支払いは、現金での窓口精算のほか、クレジットカード払いや銀行振込、コンビニ支払いに対応しているケースもあります

原則として病院から届く請求書にしたがって支払うこととなりますが、分割払いや後払いの相談に乗ってもらえることも多いので、支払い方法に不安がある方もご安心ください。

認知症の入院費用の内訳

続いて、月7万円〜30万円が目安の入院費用について、その内訳を下記の項目ごとにご紹介します。

  • 認知症の検査費用
  • 認知症の治療費用
  • 入院保証金
  • 差額ベッド代
  • 食事代
  • 交通費
  • 日用品代

なお、保険が適用される検査費用・治療費用などに関しては、所得や年齢に応じて1割〜3割負担と変動します

そのため一人ひとりの状況や症状に応じて、金額が変わりやすい点に注意してください。

認知症の検査費用

入院前の認知症検査では、MRI検査や心理検査にかかる費用が発生します。

検査費用は医療保険の適用範囲なので、3割負担の場合で数千円〜数万円ほどが目安となります。入院中に各種検査を受けた場合にも、随時検査費用が請求されます。

認知症の治療費用

入院費用の大きな割合を占める認知症の治療費用は、病院によって1日あたりの基本料が定められているため、その金額に入院日数を掛けて算出します

治療費用も医療保険の適用範囲内なので、自己負担割合に応じた金額が請求されます。なお、治療費用の中には、認知症専門診断管理料・認知症患者地域連携加算と呼ばれる費用のほか、投薬代・カウンセリング料なども含まれます。

在宅復帰のためのリハビリや排泄介助・食事介助を受ける場合にも費用が上乗せされるため、詳細な金額は病院に問い合わせてみると安心です。

入院保証金

病院によっては認知症の方の入院時に、入院保証金を預けることがあります

入院保証金は入院費用の支払いに充てられ、費用が発生しなければ返金されるお金です。入院保証金を預けることで将来の費用負担は抑えられますが、入院初月の費用が高額になることに注意しましょう。

差額ベッド代

差額ベッド代は、認知症の入院で基本となる大部屋ではなく、2人部屋や個室の病室を希望した場合に発生する費用です。

差額ベッド代は保険の適用外であり、10割自己負担となります。令和5年7月に公表された、厚生労働省・中央社会保険医療協議会「主な選定療養に係る報告状況」のデータによれば、1日あたりの差額ベッド代の平均は、以下の通りです。

1人部屋:8,322円
2人部屋:3,101円
3人部屋:2,826円
4人部屋:2,705円

正確な差額ベッド代は病院によって異なりますので、金額が気になる場合や病院の窓口やHPで確認してみましょう。

食事代

入院中の食事代は、全国一律で1食460円と定められています1日3食で1日あたり1,380円の負担です

食事代は原則として保険の適用外ですが、住民税非課税世帯の方や特定疾患がある方などは、食事代が減額または無料となることがあります。

交通費

入院中に家族が面会に訪れる際の交通費も事前に見積もっておくと良いでしょう

家族が面会するための電車代・バス代・ガソリン代は保険の適用外であり、長期にわたる入院では費用が高額になります。あらかじめ1回あたりの交通費を計算しておき、家族にとって無理のない範囲で面会ができるようにシミュレーションしておきましょう。

日用品代

認知症の入院中に必要となる冷蔵庫・テレビの使用料金や衣類のクリーニング代、おむつ・下着・シャンプー・歯ブラシなどの消耗品を用意するための費用もすべて自己負担です。

病院によって必要な日用品代は変動するため、入院前に確認しておくと良いでしょう。

認知症の入院費用の支払いが難しい場合は?

検査費や治療費をはじめとする認知症の入院費用を支払うことが困難な場合には、まず病院に相談してみることが大切です。

患者様の支払い負担を軽減するため、分割払いや支払い期限の延長に応じている病院が多いため、遠慮することなく率直に連絡してみましょう

また、病院に相談する以外にも下記のような制度を利用することで、支払い負担を抑えることが可能です。

  • 高額療養費制度を活用する
  • 限度額適用認定証を利用する
  • 高額医療費貸付制度を使う

それぞれの制度の仕組みについてご紹介します。

高額療養費制度を活用する

高額療養費制度とは、医療保険が適用された自己負担額が、1ヶ月あたり一定の金額を超えた時に、超過分が後から戻ってくる制度です。公的な医療保険に加入していれば誰でも利用することが可能で、自己負担限度額の上限は所得や年齢によって異なります。

たとえば、70歳以上かつ年収370〜770万円(3割負担)の場合で100万円の医療費がかかった場合、本来の自己負担額は30万円です。

しかし高額療養費制度によって1ヶ月あたりの上限は87,430円と算出されるため、差額の212,570円は後から支給を受けることができます。

参考:厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

限度額適用認定証を利用する

限度額適用認定証とは、事前に申請しておくことで高額療養費制度における自己負担額のみを窓口で支払えるようになる仕組みです。高額療養費制度では、病院の窓口で一旦医療費の3割を全額を支払い、後から自己負担限度額の超過分が支給されますが、まとまったお金が用意できず窓口での支払いが困難となることも考えられます。

しかし事前に申請した限度額適用認定証を病院に提出することで、前述の例であれば30万円の支払いではなく、87,430円の支払いに抑えられます

高額療養費制度を利用したいが、窓口での支払いが難しい場合に活用したい制度です。

なお、70歳以上の方は「高齢受給者証」が限度額適用認定証の代わりになり、病院の窓口で提出することで自己負担限度額までの支払いに収まります。そのため限度額適用認定証を申請する必要はないのでご安心ください。

高額医療費貸付制度を使う

高額医療費貸付制度は、高額療養費制度で限度額を超えた分が支給されるまでの約3ヶ月の間に、経済的負担を軽減するために無利子で貸付を受けられる制度です。

貸付を受けられる上限は、高額療養費制度で戻ってくる金額の8割相当額となっています。

認知症で入院する前の注意点

最後に、認知症で入院する場合に費用面以外で注意しておきたいポイントについてもご紹介します。

  • 通帳や印鑑を揃えておく
  • 医療保険・生命保険の契約内容を調べる
  • 服用薬を確認しておく

大まかな入院費用とともに、これらの準備も進めておきましょう。

通帳や印鑑を揃えておく

認知症の方の通帳や印鑑、保険証などは今後の手続きにおいて必要となるため、すぐに取り出せる場所に保管しておくことが大切です。

認知症の入院時には、家族だけではなく本人の印鑑を必要とするため、もの忘れで紛失したりしないように注意しましょう。

また、入院費用を用意するために本人の銀行口座にどれだけの残高があるかを確認することも忘れないようにしてください。

医療保険・生命保険の契約内容を調べる

民間の医療保険や生命保険に加入している場合、認知症による入院でも保険金が下りることがあります

入院費用がカバーされる保険であれば、入院に伴って発生する費用負担を大幅に抑えることができますので、忘れずに確認しておきましょう

家族が保険会社に問い合わせた時にもスムーズに手続きを進められるよう、契約書類を手元に用意しておくと安心です。

服用薬を確認しておく

認知症の入院にあたっては、入院中も服用しなければならない薬を確認しておきましょう

かかりつけ医に服用薬の内容を確認し、自宅で薬がどこに保管されているかを調べておくと確実です。お薬手帳がある場合には、入院の際に合わせて持参してください。

認知症の症状と合わせて持病や生活習慣についてもまとめておき、適切な治療が受けられるよう専門医に伝えておきましょう。

まとめ

認知症で入院した場合に発生する費用は、月7万円〜30万円が目安です。

入院する病院での検査・治療内容に加え、年齢や所得に応じた自己負担割合や、差額ベッド代などによっても大きく変動するため、正確な入院費用を確認したい場合には病院に問い合わせてみると安心です。

入院費用の内訳として、預かり金として支払う入院保証金や、家族が面会するための交通費、冷蔵庫・テレビの使用料金や消耗品などの日用品代も発生する点にも注意しましょう。

入院費用の支払いが難しい場合には、病院側で分割払いや後払いに対応しているほか、高額療養費制度によって自己負担限度額までに抑えることができるので、支払い方法や制度については病院・自治体などに相談してみることをおすすめします。

当院・丹沢病院について

認知症は、症状によっては薬と保持機能の活用で発症や進行を遅らせることができ、早い治療によって健康な時間を長くすることができます

当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。(診断により、入院も可能です

なお、ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、医師による「もの忘れ相談」 を開設しています

※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

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この記事の監修者

丹沢病院院長。認知症サポート医の資格所有。認知症に関する多くの講演実績を持っており、患者だけでなく、その家族に対しての不安・悩みにも寄り添い、サポートを行ってきました。「認知症はとにかく早期に発見し、治療することで、進行を緩やかにすることができる」ということです。あなた自身のためにも、そしてご家族のためにも、不安に感じられることがございましたら、まずは当院にお気軽にご相談ください。

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